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自動運転業界からエンタメ業界へ。「CreateAI」は名のとおりAI活用で,乙女ゲーや金庸作品のAAA RPGに乗り出す[CJ2025]
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印刷2025/08/04 15:56

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自動運転業界からエンタメ業界へ。「CreateAI」は名のとおりAI活用で,乙女ゲーや金庸作品のAAA RPGに乗り出す[CJ2025]

 中国のゲームショウ「ChinaJoy 2025」で,「CreateAI」という会社のブースを訪ねた。同社は日本にもオフィスを構える,AIテクノロジーを生業とする応用人工知能企業である。

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 見出しの乙女ゲームや「金庸群俠傳」についてはのちほど説明するとして,まずは数奇な流れがあった同社のことを簡単に紹介する。

 CreateAIはもともと,自動車の自動運転関連のスタートアップ企業「TuSimple」(現地名:図森未来)として,2015年に設立された。以降はアメリカを中心に自動運転技術で成果を上げたが,2024年1月に事業を停止。そこから社名をCreateAIに変え,エンタメ業界に参入した。

 なお,詳しい流れを解説するとお堅いニュースになるので,ここまでとする。知っておくべきは,今は持ち前のAIを用いて,エンタメ業界にて,アニメにゲームにAI生成コンテンツにと活動していることだ。

 通りのよさそうな話だと,中国の作家・劉慈欣氏のSF小説「三体」を題材にした,アニメ映画とゲームを関連各社と共同開発中とのこと。
 前者に関しては,「マクロス」シリーズの河森正治氏と,日本のCG業界の先端「白組」と手を組み,制作に乗り出しているようだ。

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 それではブース内の各展示を見ていこう。まずは,AIコンパニオンを表明する女性向けゲーム「Breath for You」から。

 本作は見てのとおり,色気の香る男たちと,甘い恋の駆け引きを楽しむモバイルゲームだ。特徴としては,AIを活用したテキスト生成にある。彼らはプログラムされたメッセージを発するのではなく,(すべてではないだろうが)AIを介してそのときそのときの言葉をくれる。

 こうしたAIコンパニオンの概念は,ここ数か月で急速にオモテに出てきており,年内は同様のAI活用キャラクターが次々と出そうである。

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 本作についてはブーススタッフに話を聞いた。まず同社が女性向けゲームに手を出すのは,今回が初めてとのこと。
 このジャンルを選んだ理由は,女性向けゲームが中国市場でも成熟してきており,自分たちの強みを存分に発揮できそうだから,だという。もちろん,これを推進する強火なスタッフもいたのだろう。

 前提として,AIを使ったキャラクターだろうと,簡単に大量の交流を生めるわけではない。とくに土俵が女性向けゲームなのだ。開発設計におけるAI使用のルールを誤れば,人格のブレや発言の乱造などの懸念点が浮上してしまい,SNS上にて赤壁の戦いが幕を開ける。

 なにより女性向け界隈には,F1レースのごとくシビアなライン取りが求められる。そこに(ゲーム業界においては)ポッと出の企業が参入しても,言外の掟を知らずのうちに破ってしまい,上記のように赤壁ウォーの火蓋が切って落とされかねない。これはもうそういうものだ。

 この点について尋ねると,「我々も重々承知しています。そこは皆さまに信頼していただけるよう,自分たちなりのレギュレーションを設けて準じます」といった意思を見せてくれた。
 少なくとも,女性向け界隈のことをなにも知らずに,ただ単にAIを見せびらかしにやってきた,ということではなさそうだ。

 本作は中国のほか,日本・韓国・アジア圏でリリースされるが,2025年10月をめどにプレイテストを考えているらしい。なお,お膝元の中国では遅れるかもという。おそらく代号の関係でだろう。
 現地では「テストのときはぜひ!」と言われたが,そのとき私がヘタに触れてレポートしたものなら,間違いなくレッドクリフ待ったなしの開戦につながるので,こちらも4Gamer女子部の専門家に委ねるとする。

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 上記はゲーム業界よりもアニメ業界で話題になっているだろうか。親会社をCreateAIとする日本企業アニモンドリームファクトリーが2025年5月に提供を開始した,アニメ動画生成プラットフォーム「Animon.ai」だ。アニメ特化のAI動画生成は,本サービスが世界で初だとされ,直近ではアップデート版の「Animon Studio」もリリースされた。

 本サービスは「テキストから画像・動画を生成」「キーフレームの始点と終点の間を補完(最初と最後の原画を用意すれば,中間の動画を自動生成するの意)」といった,AI生成らしいサービスだ。

 端的に言えば,イラストが数分でアニメ動画に変身する。

 また,Animonにはフィルタリング機能が備わっており,これで“問題になりそうな使用方法を防ぐ”ようにしているとのこと。
 これらの話を深掘りすると,記事の方向性が変わるので割愛とさせてもらうが,遵法精神をポリシーとする,あるいは「したい」ことが分かる。

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 最後は,AAA級の武侠オープンワールドRPG「金庸群俠傳」だ。こちらはCJ2025での初発表であり,ゲームの姿形はなかった。予定しているプラットフォームはPCと家庭用ゲーム機で,リリース予定は2027年後半とされる。

 金庸群俠傳は,香港の作家・金庸氏が書いた小説のキャラクターが総登場するゲームで同名タイトルのゲームが過去にも発売されている。なお金庸氏は「20世紀の中国文学において,金庸の名は文化現象となった」と言わしめられる,古くから愛されている小説家だ。氏の小説は映像化やゲーム化などでマルチメディア展開され,今日までその名を継いできた。年代や影響力ではなく知名度だけで話すと,日本においての「サザエさん」的なネームである(はずだ)。

 また本作に関しては,このときだけたまたま手が空いていた,同社CEOのチェン・ルー(呂程)氏から直々に教えてもらえた。

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 本作はUnreal Engine 5で開発されており,金庸シリーズの歴代キャラクターや名場面がゲーム上で再現されるという。ルー氏は「全キャラクターです。全作品に登場する全人物を出します」と強調した。

 そしてプレイヤーは,この江湖の世界(※)に迷い込んだ旅人として,原作ストーリーを目の当たりにする。そして,いくつものクエストで展開を書き換え,マルチエンディングの結末を目指していく。

※「江湖」(こうこ)とは,中国における武侠の概念“など”を指す言葉。しかし,この単語に込められた意味合いは,日本における「ヤバい」くらい幅広いため,ひと言では言い洗わせられない深みがある

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 申し訳ないことに私は金庸のことを知らず,人物名や技名などはまるで分からなかった(翻訳を介しての誤記がありうるためカット)。

 ただ,日本においては一部で認知されている。1996年から2004年にかけて金庸氏の小説は日本語化され,それに続く形でドラマがケーブルテレビや配信サービスで見られるようになった。なお,4Gamer編集部でも3人くらい熱めのファンがいるそうだ。

 といった小話はおいておき。ゲームの特徴はとても多そうだが,ルー氏からは2点挙げられた。まず,本作では同社が準備していた“アジア最大級の超大型モーションキャプチャ施設”を用いているらしい。
 そこには,通常は1名か2名くらいとされる武侠専門のアクターを8名も呼び,綿密な動きを表現してもらっているという。

 もう1点は,もちろんAIだ。本作では最近聞くようになってきたNPC会話へのAI導入に加え,とくに開発面で寄与しているらしい。
 用途は,前述のモーションキャプチャの動きのシミュレートをはじめ,フィールドのほかに草木や壁などのオブジェクト生成にも活用しているという。他社でも類例は聞く使い方だが,AI企業が自慢の技術を総動員しているのだから,ツール自体の効率性には差がありそうである。

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 本作の開発期間は今のところ約1年で,キャラクターや舞台などの設定は確定したが,ゲームの制作はまだはじまったばかりとのこと。
 ただ,2025年末にはプレイテストができるよう進めているというから,理想とする形はすでにビジョンを持っているのだろう。

 それと写真の説明をし忘れていたが,ブース内の金庸エリアは「原作(射鵰英雄伝など)に登場する,あまりに神秘的な桃花島の片隅を切り取り,桃の花を咲かせ,旧友を招き入れます。このCJ2025で,皆さまと共に武術界の美しい思い出を残せたら幸いです」といったコンセプトとされている。

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 最後に,次の予定があるルー氏に,会社のことを短めに尋ねてみた。まず,ルー氏は2016年からずっとAI関連に携わっており,約4年前からゲームやコミックのAI活用を考え出したという。
 このあたりは年代的に,社名変更の時期と重ねると補足が必要だが,申し訳ないことに不明である。単に私が聞き忘れていたせいだ。とにかく,2024年から急にやりだしたということではないのだろう。

 現在,CreateAIがエンタメ業界においてどれくらいの位置にいるのかと聞くと,「中規模になったと自負しています」と語った。もともと技術畑で生え育った人たちが,中国を代表する三体や金庸に携わっているのだから,転身例としては十分なサクセスストーリーと言えよう。

 AIの将来性という,フワッとした質問には「ずっと可能性を感じてきました。AIというのはツールなので,なにかでイノベーションを起こすために使う余地は,今後もまだまだあります」と言った。それとルー氏は同社タイトルについて,AI企業だからAIを使っておもしろいゲームを作る……のではなく。純粋におもしろいゲームを目指したいと語った。

 つまり,CreateAIがAIを片手にこちら側に乗り込んできたのは,おもしろいゲームを作りたいというスピリットがあったからなのだろう。

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