連載
猫とカエルの絆を描く「Princess of the Water Lilies」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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時は流れ,すっかり家族の一員となった猫は,魔法の首輪を授かる。愛する湿地帯に忍び寄る不穏な機械の影。平穏な暮らしを守るため,小さな英雄の冒険がいま幕を開ける。
本日は,マレーシアのWhy Knot Studioが手掛ける「Princess of the Water Lilies」を紹介しよう。本作は異種族間の愛と絆を題材にしたパズルアクションゲームだ。プレイヤーは魔法の力を持つ猫となり,カエルの一族とともに機械仕掛けの脅威から自然を守るため旅に出る。
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本作の特徴は,主人公である猫の習性を活かした魔法アクションにある。ボタンを押して「喉を鳴らす」と,不思議なエネルギーが波紋のように広がる。この力を使えば,閉じた花の蕾を開いて足場に変えたり,隠された通路を出現させたりできる。ただ敵を倒すだけでなく,周囲の景色そのものを変化させて道を切り開く手触りが独特だ。
物語が進むにつれて,ツタを掴んでターザンのように空を舞う動きや,水中を自由に泳ぐ力も手に入る。行けなかった場所へ戻り,新たな発見をするメトロイドヴァニアのような楽しみもある。
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そして道中は平穏な散歩道とはいかない。この世界は愛くるしい見た目とは裏腹に,トゲや敵に一度でも触れれば即座にやり直しとなるルールが採用されているからだ。ステージの奥には巨大なボスが待ち受け,迫りくる画面のスクロールに追われながらのギリギリの戦いが強いられる。美しい景色に見とれている暇はない。プレイヤーは常に鋭い集中力を保ち,正確な操作で困難を乗り越える必要がある。
黄金期のアニメへのリスペクト
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画面を見れば,かつてのアニメ映画が持っていた温かさを思い出すはずだ。デジタルならではの硬さはなく,背景もキャラクターもすべて手描きで丁寧に作られている。特に主人公の動きは必見だ。しなやかに着地する足取りや,サボテンにしがみつく必死な姿など,猫ならではの愛嬌が細部まで行き届いている。ただ動かしているだけで,作り手のこだわりが指先から伝わってくるようだ。
言葉に頼らない雄弁な物語
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このゲームには,状況を説明するテキストが存在しない。会話や感情はすべて,吹き出しに浮かぶ絵やアイコンだけで表現される。どこの国の言葉を話す人でも,猫とカエルの間に流れる温かい空気や,迫りくる危機を見ただけですぐに理解できる。文字を追う負担がない分,画面の中の出来事に集中でき,キャラクターたちの心情がより身近に感じられるはずだ。
癒やしと緊張の落差
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水彩画のような優しい世界に油断していると,痛い目を見る。敵や罠に一度触れれば即アウトという,昔ながらのアーケードゲームのような厳しさが待っているからだ。ボス戦では画面が強制的に動き出し,逃げ場のない焦りの中で瞬時の判断を求められる。可愛らしさに惹かれて遊び始めたプレイヤーも,気づけば手に汗を握り,真剣な表情で画面を見つめることになる。
本作は,愛らしい猫とカエルの家族愛を描きながら,その実,プレイヤーに高い集中力を求める骨太な作品だ。昔懐かしいアニメの雰囲気に浸りたい人はもちろん,見た目の可愛さに騙されず,歯ごたえのあるアクションで腕試しをしたい人には特におすすめしたい。何度も倒れながら少しずつ進んでいく達成感は,この厳しい世界だからこそ味わえる特別なものといえる。
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