インタビュー
[インタビュー]「デジモンストーリー タイムストレンジャー」が大切にしたのは,デジモンの進化とゲームの普遍的な面白さ。リリースまでの過程や今後を開発陣が語る
当初は騎乗デジモンたちの空中戦があった!? 登場デジモンたちの裏話
4Gamer:
タイムストレンジャーでは,新たにデジモンのモデルを作り直しているということですが,登場デジモンはどのようにして決めていったのでしょうか。
個人的にはデジタルワールドをガッツリ描く関係もあって,かつての「デジモンペンデュラム」のように,属性がはっきり分かるデジモンが多くいたような印象でした。
友野氏:
まず登場デジモンに関しては,アニメの主役級など絶対に出さないといけないデジモンたちは原さんとの話し合いで決まっていきました。
あとはおっしゃる通り,今回はデジタルワールドを描くことが決まっていたので,“マップ映え”も考えていく必要がありました。何も考えずに登場デジモンを決めてしまうと,水の中にいるデジモンはどうしても少なくなってしまうので,そうした属性の偏りをできるだけ少なくするように心がけていました。
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4Gamer:
あと,新規登場のデジモンも今回は何体か用意されていましたが,今回はかなり完全体のデジモンが多い印象でした。実装の意図を教えてください。
友野氏:
意図というと大げさかもしれませんが,デジモンは放っておくとどうしても究極体が増えてしまいがちなんです。到達点なので注目もされやすいですし,逆に間の完全体や成熟期は出しても「なんで?」と突っ込まれることもあるわけです。
4Gamer:
確かに成長期を出すなら究極体までセットみたいな印象はあります。
友野氏:
ただゲームを作る際に不足するのは,成熟期と完全体なんです。この世代は“ちょうどいい敵”として出せますし,RPGとしてはものすごくほしいんです。あと,今回はプレイヤー側もアノマリーポイントの関係で,完全体である期間が長くなることは分かっていました。
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4Gamer:
サイドミッションのこなし方にもよりますが,確かに物語中盤から終盤までは完全体という人が多かったように思います。
友野氏:
なので,今回完全体を多めに追加したのですが,前後の進化ルートまで考えて納得の完全体を作るというのもかなり難しかった作業ではありました。
4Gamer:
追加デジモンのグレートグリズモンはストーリーに出てきていませんが,あれは何か理由があったのでしょうか。
友野氏:
シナリオの変更によって,結果的に出られなくなりました。
最初はグレートグリズモンからカリスモンになるという話が案としてあったんですが,結果としてベアモンの弟がグラップレオモンになって,兄のほうはカリスモンになった後から描かれることになったので,シナリオには登場しなくなったという感じです。
4Gamer:
あとは,今回タイタモンがスカルバルキモン,クレニアムモンがアンヴァルモンに乗った姿が登場しましたが,あのアイデアはどこから生まれたのでしょうか。あの2体はシナリオとしても別々の場所で出てきますし,少し不思議に思ったのですが。
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友野氏:
これもシナリオの変更によるものです。もともとはタイタモンとクレニアムモンを馬に乗せて空中戦を描きたいというアイデアをハイライトの1つとして考えていた時期があったんです。
結局作っていく中でそのシーンはなくなってしまい,どうするかという議論になったんですが,最終的に騎乗状態の2体を別々に出そうという判断になったという感じです。
4Gamer:
そんな事情があったんですか。クレニアムモンに関しては,ラスボス戦でスレイプモンと攻撃するシーンがありました。ロイヤルナイツの総出演シーンは本作の大きな見せ場の1つだったと思いますし,てっきりあのために作られたのだと思っていました。
友野氏:
おっしゃる通り,あのシーンは我々としても良い見せ場が作れたなと思っています。工数やもろもろの都合上,あのシーンを入れるのを諦めようと思っていた時期もあったのですが,最終的にはスタッフたちの力で完成に漕ぎつけられました。
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4Gamer:
開発チームの皆さんはデジモンに詳しい人たちが多くいらっしゃると聞いていますが,熱意も高いんですね。
友野氏:
はい,デジモン博士たちがいます。デジモンを1体出すときも過去の歴史をしっかり把握しながら,それを踏まえたうえで覚悟を持って取り組まなければならないみたいな話を自分もよくされていましたし,自分もツッコまれることがありました(笑)。それくらい,こだわりと情熱を持っているスタッフたちなんです。
原氏:
開発の皆さんは,本当にデジモンへの理解度のレベルが高いんですよ。私ももともとデジモンは追いかけていたんですが,改めてプロデューサーになるタイミングで過去の作品を一通り見返し,対等に喋れるよう努力する必要がありました。
4Gamer:
スタッフの理解度ということですと,「タイムストレンジャー」には,新宿中央公園にいる穴を掘っているギルモンやバードラ運送など,アニメや過去のゲームのネタをはじめとして,小ネタがかなりたくさん仕込まれていましたね。
原氏:
ファンの皆さんにはかなり細かいところまで気づいていただいて,さすがだなあと思いました。
友野氏:
スタッフがそういう小ネタをどんどん入れるんですが,どこまで拾ってもらえるのかというのは,正直分からなかったんです。ここまで解像度高く見ていただいていることは本当にうれしかったです。
4Gamer:
気づかれてびっくりした小ネタは何でしたか。
友野氏:
メルクリモンがセントラルタウンの奪還する場面の上空でシャイングレイモンとダークドラモンが戦っている(※)というネタが拾われたのにはビックリしました。そもそもかなり見つけにくいところにあるので,細かいところまで見ているなと。
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※元ネタは「デジモンセイバーズ」。人間とデジモンが融合したバイオダークドラモンとシャイングレイモンが戦うシーンが存在する
原氏:
私はテリアモンのジャンケンですね。テリアモンは戦闘のリザルト画面で,耳をカメラに向けて突き出すモーションがあるんですが,よく見ると耳の先がグー,チョキ,パーの3パターンあるというものです。
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4Gamer:
公式の動画でも公開していた小ネタですよね。
原氏:
それがあれを公開する前に気づいていた人がいたんですよ。テリアモンの攻撃で戦闘を終えてなおかつ,リザルトを飛ばさないようにして何度か見ないとそもそも気づきませんし,これがジャンケンになっているなんて,ちゃんと見ているなあと思いました。
4Gamer:
小ネタではないですが,ホストコンピュータのイグドラシル,ホメロス,コンロンがオープニングでいきなり擬人化して登場するのもビックリしました。
友野氏:
あれに関しては「解釈違いだ!」と怒られる可能性もあったので,好意的におっしゃってもらえて,すごく自信になりました。
デジモンはクリエイターの解釈を入れられる余白が多いコンテンツだと思っているので,押さえるところは押さえながら,自由に解釈できるところは自信と責任を持って新しいものを作っていかないといけないと今回改めて感じました。
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デジモンファン以外にも広がりを見せた「タイムストレンジャー」
4Gamer:
そういえば,コンロンは6月末に発表された「デジモンペンデュラムCOLOR 6/7」の設定で明らかになった「デジタルワールド・シャンバラ」のホストコンピュータですよね。その設定がさっそく「タイムストレンジャー」に組み込まれているのは,すごいスピード感だなと思ったのですが。
原氏:
そうですね。本当にライブ感のある速度で実装を進めていました。もともとデジタルワールドが3つあるというのは,前から設定として言われていたとは思うんですが,コンロンの名前や設定が完全にFixしたのは,割と最近なんです。
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4Gamer:
ゲーム内には,シャンバラの中心的なデジモンであるスサノオモンが登場するサイドミッションも用意されていました。
原氏:
ある程度の設定はプレックスさんから共有されていたので,どう登場させようかという話自体はかなり前からありました。コンロンの名前が決まったりとか,デジモンの扱いを少し変えたりといった微調整が発売直前に発生したという感じです。
友野氏:
ひょっとしたらシャンバラの名前が「タイムストレンジャー」初出になるかもしれないという時期もありましたね。
4Gamer:
え,そうだったんですか。
原氏:
結果的に「ペンデュラムCOLOR 6/7」が先に発表されたんですが,我々としてはどうなるのか冷や冷やしてました(笑)。
4Gamer:
コンロンの件もそうですが,最近のデジモンコンテンツは,ホビー,アニメ,ゲーム間の連携が以前よりかなり緻密にできているイメージがあります。内部でもコンテンツ間の連携をしっかりやっていこうという動きがあるのでしょうか。
原氏:
そうですね。数年前から各デジモンコンテンツのの足並みを揃え,より一丸となってデジモンというIPを強く大きくしていこうと,グループ各社や東映アニメーション様と協力し体制を整えていました。
例えば,2024年8月からYouTubeのデジモン公式チャンネルで始まった「テリアモン助手研究室」は,まさにそうした取り組みの表れです。
これを見ていただければ,今のデジモンのトレンドは追えますし、デジモンにはさまざまな楽しみ方があるということも分かっていただけるのではと感じています。
4Gamer:
「テリアモン助手研究室」でも,「タイムストレンジャー」は大きく取り上げられることが多かったように思います。開発現場を取材するという今までにない取り組みも行われていました。
原氏:
あれは関係各所への調整も含めていろいろ大変だったんですが,一番やってよかったなと思っている企画ですね。
プロデューサーである私がどんなに「開発チームのデジモン愛がすごいんです!」と言ったところで,どうしてもうさん臭さが出てしまいますし,伝えきれない部分も出てきてしまいます。
それをちゃんとディレクターである友野さんや開発者自身の口から語っていただくことで,開発チ―ムがどれだけデジモンを愛しているか,の伝わり方は全然違ってくると思うんです。
4Gamer:
ファンからの反応はいかがでしたか。
原氏:
「デジモンが好きな気持ちが伝わってきた」というコメントをSNSなどで多くいただきましたし,ファンの方々が友人に動画を紹介してくださっている姿も見られました。「タイムストレンジャー」は,ファンと共に大きく成長できたタイトルなんじゃないかなと,強く感じた瞬間でした。
4Gamer:
開発現場の取材もそうですが,今回はプロモーションのやり方もかなり大きく変わっていますよね。デジモンファンだけでなくもっと広い層にアプローチしているといいますか。
原氏:
その点は我々も意識していましたし,ファン,特に海外の方にもプロモーションは褒めていただけたかと思っています。
海外の方はファンの視点を持ちながらビジネス的な視点を持っている方が多く,「デジモンのファンだけではなくて,多くの人たちに届けるために本気で売り出そうとしてくれている」とか「長らくファンをやっている自分からすると,デジモンが広がってくれるのはうれしい」といったコメントをいただきました。
私自身もデジモンストーリーの進化システムや人とデジモンの絆を描いた物語は唯一無二だと思っていましたし,これはもっと広い層にウケると思ってプロモーションを続けていました。それが皆さんに伝わったことが本当にうれしかったですね。
4Gamer:
先ほど友野さんが「8年ぶりの新作で不安や恐怖があった」とおっしゃっていましたが,自分の好きなデジモンの新作が絶対に売れてほしいという思いはファンも同じだったのかもしれませんね。
友野氏:
2012年の「デジモンワールド リ:デジタイズ」のときは,それこそ当時プロデューサーだった羽生さんが本当に1人であちこちに行って草の根プロモーションを続けていた記憶があります。
今回は計算しつくされた露出というか,プロモーションのやりかたがすごく大がかりになっていました。開発としては,「PVの出しかたがうますぎて期待値上がりまくってる!」と若干恐怖でしたが(笑)。
原氏:
やはりプロデューサーの仕事をやっていると,羽生の功績は大きいなと改めて感じます。そこからさらにデジモンのファン層を広げていくのが,私の仕事なのかなと。
4Gamer:
SNSなどを見ると,「タイムストレンジャー」をきっかけにほかのデジモン作品にも興味が出てきたという声が見られました。実際にデジモンのファン層が広がった手ごたえは感じておられますか。
原氏:
手ごたえは感じています。現在放送中の「DIGIMON BEATBREAK」は好評いただきつつ,「タイムストレンジャー」をきっかけに過去のアニメ作品の視聴数も上がっているとうかがっていますし,多くの配信者の方にもプレイいただいてます。この流れはこれまでのデジモンからすると,まったく想像がつかない未来だったと思います。
4Gamer:
液晶玩具どころか,アニメもまったく見たことがない方もプレイしていますよね。
原氏:
そうですね。初めての体験っていつまでも心に残り続けると思うんですが,「タイムストレンジャー」が初めてのデジモン体験になったという方がすごくいらっしゃるのは,本当に感謝しかないですね。
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ダウンロードコンテンツ第2弾,第3弾はそこまで間を置かずにリリース?
4Gamer:
今後についても聞かせてください。DLC1弾が12月9日に配信されました。第1弾はオメガモン祭というくらいオメガモンにフィーチャーしたものでしたが,DLCに登場するデジモンはどのように決めているのでしょうか。
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原氏:
登場するデジモンはさまざまな条件から究極体5体がそれぞれのDLCで追加される形とさせていただきました。あとはプレイヤーの皆さんに広く喜んでもらえることを目指して登場デジモンを決めています。
たとえば,よく登場要望をいただくガンマモンですが,究極体のシリウスモンだけ入れると納得し辛い進化ルートを作らざるを得なくなってしまいますし,かといってガンマモンからシリウスモンまですべての世代を入れてしまうと,それでDLCが1つ終わってしまいます。今回はバランスを考えながら登場する究極体5体をそれぞれ選定しています。
4Gamer:
DLC第1弾では暮海広大,暮海杏子の2名にスポットが当たるシナリオになっていましたが,第2弾では鷺坂ヒロコ,第3弾では城木明日奈,モニカ・シモンズが登場するというアナウンスもありましたね。
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原氏:
はい。DLCでは追加デジモンを実装しながら,本編では描ききれなかった人間キャラクターの深掘りを行っています。大体のボリュームは,それぞれ1時間くらいになっています。
4Gamer:
DLC2弾,3弾の配信時期はいつごろになるのでしょうか。
原氏:
はっきりしたことは申し上げられないのですが,ここからは短いスパンで配信していく予定です。なので,あまりお待たせせずにお届けできるのではないかなと。
4Gamer:
楽しみにしています。最後に読者へのメッセージを今後のデジモンゲームの展望も兼ねて聞かせてください。
原氏:
本当に多くの方々に遊んでいただき,ありがとうございます。ただ同時に,反省点や気を引き締めなければいけない部分もあるとも感じています。
先ほども少し触れましたが,現在デジモンコンテンツは,東映アニメーション様やグループ各社との連携に力を入れています。今後はこの取り組みによりデジモンIP全体を成長させながら,ゲームにも引き続き力を入れて参ります。
今回は8年かかりましたが,デジモンゲームチームも今規模を徐々に拡大しつつ,継続的に成長していけるような体制づくりを進めています。いろいろ考えていることもありますし,ぜひ今後のデジモンゲームにご期待いただければと思います。
友野氏:
「タイムストレンジャー」を楽しんでいただきありがとうございます。過去の「リ:デジタイズ」のときも,デジモンの見せかたをより広いデジモンファンにアピールできるものにしたいということから,大人であっても楽しめる内容にしていったという経緯がありました。「タイムストレンジャー」はその考えの延長線上にあって,誰が遊んでも面白い基礎をキッチリ固めていこうとしたタイトルだったと思っています。
今回の「タイムストレンジャー」で,デジモンファン向けの内容としてはやれることを出し切ったという部分もあるので,今後に何かをやるとしたら「デジモンって何?」という認識ぐらいの人にも,手に取ってもらえるような新しいものを目指していかないといけないと日々思考を巡らせています。
4Gamer:
デジモンゲームの今後を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
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- 編集部:だび
- カメラマン:佐々木秀二
(C)本郷あきよし・東映アニメーション (C)Bandai Namco Entertainment Inc.

















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