
インタビュー
[インタビュー]ソニック×初音ミクの音楽コラボ「Project ONSOKU」とは何なのか。かいりきベア氏と「ソニックレーシング クロスワールド」開発陣に聞く,その狙い
何せ,第1弾の「最愛人生ランナー」を手がけるのは,数々のヒットナンバーを生み出してきたかいりきベア氏なのだ。氏のチャンネルで公開されたMVは,すでに大きな注目を集めており,続く楽曲にも期待が高まっている。
YouTube「かいりきベア/Kairiki bear」
しかしこのプロジェクト,いまいち全貌が掴みにくい。2025年9月25日に発売される「ソニックレーシング クロスワールド」(PC / PS5 / Xbox Series X|S / Switch 2 / PS4 / Xbox One / Switch)に関連したプロモーションなのはなんとなく伝わるものの,一体何を目指しているのだろうか。
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そこで今回4Gamerでは,「ソニックレーシング クロスワールド」の中心スタッフであり,PJ ONSOKUの仕掛け人でもあるセガの小早川賢氏(コハD)と大国奏音氏,そして参加アーティストであるかいりきベア氏のお三方に,詳しい話を聞いてみることにした。
コラボが実現した経緯や「ソニックレーシング クロスワールド」との関連性,またゲームと音楽の切っても切れない関係など,興味深い話をじっくり聞いてきたので,興味のある人はぜひご一読いただきたい。
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「Project ONSOKU」とは
「ソニック」シリーズと「初音ミク」が音楽を通してコラボレーションするスペシャルプロジェクト。2025年8月28日より,5人の豪華アーティストによる5つのオリジナル楽曲と,ミュージックビデオがYouTubeで毎週1曲ずつ公開される。第1弾はかいりきベア氏による書き下ろし楽曲「最愛人生ランナー」で,以降は下記のスケジュールで順次楽曲が公開されていくという。
- 9月1日:「ウィーアーピコピコハンマーズ!!!!」(作詞・作曲:cosMo@暴走P)
- 9月8日:「ジェットブラック」(作詞・作曲:雄之助)
- 9月15日:「トレジャーガーデン」(作詞・作曲:Ponchi♪)
- 9月22日:「電光刹歌」(作詞・作曲:かめりあ) ※敬称略
またProject ONSOKUの楽曲は,9月25日発売の「ソニックレーシング クロスワールド」にも収録され,レース中のBGMとして設定できることが明らかとなっている。
かいりきベア氏とコラボ。「ソニックレーシング クロスワールド」初音ミクとのコラボプロジェクトを始動。cosMo@暴走P氏らの楽曲も公開予定

セガは本日(2025年8月28日),「ソニック」と「初音ミク」が音楽を通してコラボレーションするスペシャルプロジェクト「Project ONSOKU」が始動したことを発表した。本プロジェクトでは,5人のアーティストによる5つのオリジナル楽曲とミュージックビデオを,毎週順次公開する予定だ。
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- PC:ソニックレーシング クロスワールド
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- CERO A:全年齢対象
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- 編集部:やわらぎ
「Project ONSOKU」特設サイト
「ソニックレーシング クロスワールド」公式サイト
“世界一速い曲”を目指す「Project ONSOKU」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは「PJ ONSOKU」とは何なのか,という辺りから伺わせてください。ソニックと初音ミクの音楽コラボレーション企画とのことですが,発端は何だったのでしょうか。
小早川賢氏(以下,小早川氏):
分かりました。そのためには,まず「ソニックレーシング クロスワールド」のコンセプトからお話しさせてください。タイトルに“クロスワールド”とあるように,今作ではさまざまなキャラクターがソニックの世界にやってきたり,あるいはソニックたちがいろんな世界に飛び込んだりするコラボレーションに挑戦しています。
そのコラボの一環として,無償DLCとして登場するセガに由来のあるキャラクターの一人として,初音ミクさんにもお声かけしました。初音ミクさんにご登場いただくにあたり,「Project DIVA」のミクさん,「プロジェクトセカイ」のミクさんなども検討したのですが,せっかくなら本作ならではのミクさんに登場してもらったほうが面白いのではないかと思い,本作独自のミクさんをデザインさせていただくことになったんです。またミクさんがソニック作品に登場するのであれば,音楽でも何かできないかと考え,PJ ONSOKUの企画が生まれてきました。
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4Gamer:
「ソニックレーシング クロスワールド」が先,というか発端ではあるわけですね。
小早川氏:
そうですね。企画書を書いてクリプトン・フューチャー・メディア(以下,クリプトン)さんに持っていったところ,コンセプトにもご理解をいただき,「ソニックレーシング」へのミクさんの参加と共に,PJ ONSOKUの音楽企画が同時にスタートすることになりました。企画進行にあたっては,クリプトンさんからも「せっかくだから,もっとソニックらしい企画にしましょう」と,さまざまなアイデアもご提供いただきました。
4Gamer:
では「ソニックレーシング クロスワールド」がきっかけではあるけれど,企画としては別と考えていいのでしょうか。
小早川氏:
今後どうなるかは分かりませんが,建て付けとしてそうなります。楽曲は各アーティストさんのチャンネルで公開になりますし,PJ ONSOKUとしての活動は公開する動画が中心になります。ソニックと初音ミク,そして楽曲とアートワークによって構築された世界観から,新たなミクさん像を生み出せたらと思っています。
4Gamer:
でも,楽曲は「ソニックレーシング クロスワールド」に収録されるのですよね。レース中のBGMとして。
小早川氏:
はい。ただ楽曲自体は,敢えてあまり“レースゲームらしさ”にこだわり過ぎず,ソニックと初音ミクの魅力を最大限に生かすことを第一にしています。この辺りが,この企画の不思議なところというか,説明しづらいところではあるんですが(苦笑)。
4Gamer:
なるほど……では,楽曲に共通するコンセプトもないのでしょうか。
小早川氏:
ソニックとレースゲームに共通するフィーチャーとして,“速さ”をコンセプトとして掲げています。これはクリプトンさんとの打ち合わせから生まれてきたのですが,ソニックの持つ“速さ”を音楽的に表現することで「世界で一番速い初音ミク音楽コラボレーション」というものを目指そうと考えました。
4Gamer:
ここでいう“速さ”とは,BPM的な意味でしょうか。
小早川氏:
BPMも当然ながら,フレーズやリリックといった,音楽におけるさまざまな“速さ”を扱っています。多様な“速さ”を表現できるアーティストと一緒に楽曲を生み出すことで,ソニックらしい音楽コラボレーションにできたのではないかと思っています。……余談ですが,私が長年作ってきた音楽ゲームの曲って,めちゃくちゃ速いんですよね。BPMが速い楽曲を,世界で上から10曲並べろってなったら,全部音ゲーの曲になるぐらい速いと思います。
大国奏音氏(以下,大国氏):
……BPM170ぐらいだとバラードって言われる世界なので。
一同:
(笑)。
小早川氏:
本企画の担当である大国くんの得意技が,まさにこの速い曲を作ることなんですよね。彼がセガに入ったきっかけも音楽ゲーム作りからでして。そういった経緯もあって,PJ ONSOKUでも彼にサウンドディレクションをお願いすることにしました。ボカロPさんとのやり取りした経験も豊富で,この企画にぴったりの人選だと思っています。
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「最愛人生ランナー」誕生秘話
4Gamer:
ではここからは,PJ ONSOKUの第1弾として公開された「最愛人生ランナー」について,楽曲を手がけたかいりきベアさんにお話を伺えればと思います。まずセガからオファーを受けたときは,どう思われましたか。
かいりきベア氏:
素直に嬉しかったですね。最近のソニックはそこまでプレイできてないですが,メガドライブの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」は子供の頃にかなり遊んだタイトルだったので。自分としては時代を飛び越えて再会したというか,仕事して関われるという喜びが大きかったです。
小早川氏:
困惑しませんでした? ほかにはあまりないオファーの仕方だったと思うんですが。
かいりきベア氏:
どう作ればいいんだろうって不安はありました。なにが正解なのか,最初は見えなかったので。最終的には,テーマである「世界一速い音楽コラボ」を忠実に膨らませていった感じでしたけど。
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大国氏:
僕らも最初は何が正解か分からなくて,当初は相談しながら手探りで進めていたところがあります。アーティストさんと打ち合わせをしながら,答えを探っていくような。
4Gamer:
ちなみに,どんなオファーだったんですか?
小早川氏:
「ソニック大好きロックな中学生女子ミクさん」という,我々が勝手に妄想した女の子をイメージした楽曲を作ってほしいとお願いしたんですよ。
大国氏:
かいりきベアさんはご自身のクリエイティビティが非常に強い方なので,こういったお題を投げれば,きっと面白くしてくしてくれると信じていました。だから快諾いただけたときは,「よしっ!」という感じでしたね。
4Gamer:
セガ側として,かいりきベアさんに白羽の矢を立てたのには,どういった狙いがあったのでしょうか。
大国氏:
キャッチーで,なおかつキャラクターで世界観を表現できるアーティストというのが大きいですが,ミクさんとのコラボなので,やっぱり女の子が出てくる曲がいいよねという思惑もありました。なので「1本目はかいりきベアさん!」というのはすんなり決まりましたね。
小早川氏:
ソニックって女性ファンも多いんですよ。イベントをやると,観客にも女性が多くいらっしゃいます。なので女性から支持を集めやすい楽曲というのは,意識したところではあります。
4Gamer:
例えば,かいりきベアさんのライブなどでは,客層はどういった分布なんですか?
かいりきベア氏:
女性客が多かったですが,最近は男性も増えてきましたね。
4Gamer:
なるほど。楽曲を聴かせていただきましたが,バネで跳ねるような音や,リングを取るときの音が入っていますね。
かいりきベア氏:
そうですね。効果音を入れるのはセガさんからの提案でもありましたが,元々そうしたいと思っていたので,当初は自前で用意したものを勝手に入れていました。あとから正式な効果音を提供してもらって,完成版では実際のゲーム内の音源を使用しています。
大国氏:
「ソニックのあの効果音やフレーズを引用したい」といった提案は,かいりきベアさんに限らず,いろんなアーティストさんからいただいていました。そこから生まれた楽曲もあるので,アプローチはさまざまです。結果としてバラエティ豊かなコラボになったのではと思っています。
小早川氏:
最初はもっと,既存曲のアレンジを中心に考えていた時期もあったんですよ。そこからアーティストさんのオリジナル曲で行こうと方針転換しつつ,ソニックでお馴染みのSEなどをふんだんに使う構成にしていきました。また曲によっては,既存の音源をイースターエッグ風に使っているものもあって,ソニックファンが聞いたらニヤニヤできる内容になっていると思います。
4Gamer:
「ソニック大好きロックな中学生ミクさん」というのは,「最愛人生ランナー」のテーマということですよね。ほかの楽曲はまた別にあると。
大国氏:
もちろんです。ほかの楽曲は,ソニックシリーズの特定のキャラクターをイメージしたコラボレーションになっています。むしろ,かいりきベアさんの曲がちょっと特殊なんです。例えばこの仕様書にあるコメント群は,ソニックに持っているイメージを社内のソニックファンに聞いて集めたものなんですが,かいりきベアさんはこういった素材を落とし込んで楽曲にしあげてくださいました。
かいりきベア氏:
ソニックを意識した単語を,歌詞に散りばめてあるんですよね。ちょうど,この仕様書のコメントから引用したものもあります。
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4Gamer:
MVのイラストもソニックがモチーフですが,これはイラストレーターののうさんが手がけたものですよね。
かいりきベア氏:
ええ。もう10年近く一緒にやっているので,今回もこのタッグになりました。ただ,今回は制作の都合上,のうさんとはあまりコンタクトが取れなかったんですよね。普段は曲を作ってるときから,ラフで提案をもらったりするのですが,今回は曲が完成してからイラストを依頼する形になりました。でも完成したイラストを見たら,打ち合わせなんかなくても完璧だったんですよね。
小早川氏:
ばっちりでしたよね。映像を見てみたら。
かいりきベア氏:
そうですね。なんかアイコンタクトぐらいのノリでできちゃいました。こちらの意図を,のうさんがうまく汲み取ってくれたんだと思います。
4Gamer:
ちょっと疑問なんですが,かいりきベアさんの楽曲のイラストは,どれも色数が少ないというか,独特のテイストになっていますが,これはどうしてなのでしょうか。
かいりきベア氏:
最初はとくに意図してなかったんですが,今はあのテイストが名刺みたいになってしまったので,変えづらいんです。それに,あのサムネが並んでいるとチャンネルが綺麗に見えるので気に入っています。
大国氏:
ある種のブランディングですよね。おすすめに出てきても,かいりきベアさんだって一目で分かるし,フォローしてもらいやすい。
かいりきベア氏:
そうですね。楽曲ごとに異なるイメージを描き出す方もいらっしゃいますが,自分の場合はのうさんのイラストがあるからこそ,リスナーの皆さんに強く印象づけられていると感じています。
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4Gamer:
かいりきベアさん的に,楽曲でとくにこだわったポイントというのはありますか。
かいりきベア氏:
作詞も含めて,聴いたときにリズムよく走り抜けるような感覚を呼び起こすような曲作りは意識しました。とくにこのフレーズが,とかはないんですが,ゲーム中にガンガン繰り返し聞いてもらえたらと思います。あと,先に触れた歌詞のソニック要素を読み取ってもらえたら嬉しいですね。
大国氏:
ちょっと補足なんですが,楽曲の“速さ”というと,どうしてもBPMに目が行きがちですですけど,それ以外にもいろいろなアプローチがあるんです。例えば「最愛人生ランナー」なら,一番特徴的なのはサビの繰り返しの部分ですが,あそこで曲全体の速さを生み出しているところがあります。
小早川氏:
大国くんのいうパッセージの速さは,音ゲーとの相性もいいんです。パッセージに合わせて譜面――いわゆるノーツを配置していくことで,ゲームの中での速さを表現できますから。そういう意味でも,かいりきベアさんはPJ ONSOKUのコンセプトにすごくマッチしたアーティストさんだと思っています。
大国氏:
BPMばかり追いかけていると,どれも似通った曲になってしまうので,それはそれで危ないんですよね。PJ ONSOKUの楽曲も,BPMが高いものばかりではありません。もちろん,BPM200超えぐらいの曲もありますけど(笑)。
かいりきベア氏:
ありがとうございます。たまたまですけど,オーダーに沿ったものができてよかったです。
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- ライター:丸谷健太
- カメラマン:永山 亘

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