
イベント
好評7500件超えの哲学美少女ADV「存在/しないあなた、と私」最新作や,ライフシム「魔女のスナック」を作ってる“Nino Games”[CJ2025]
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
プレイヤーにとって第二の夢になるか。――ゲームメーカー「Nino Network」が作る美少女ゲームたちを見る[CJ2024]
![プレイヤーにとって第二の夢になるか。――ゲームメーカー「Nino Network」が作る美少女ゲームたちを見る[CJ2024]](/games/999/G999904/20240728004/TN/018.jpg)
中国のゲームショウ「ChinaJoy 2024」に,Nino Networkという中国ゲームメーカーが出展していた。得意ジャンルは美少女×経営 or 農園系といった組み合わせのようだが,4Gamerでもよそさまでも聞かぬ名だったので訪ねてみた。
同社については昨年のCJ2024でも取材しており,上記の紹介記事を書いていたが,あらためて簡単にまとめておこう。
・2010年代の後半ごろから活動している
・美少女×経営系 or 農園系なゲームが得意
・主戦場はPCゲーム(Steam)とスマホゲーム
・国外ではあまり情報を発信していない
・社名を検索しても,ほぼ情報が出てこない
・でも,現地会場でのにぎわいはたいしたもの
といったところだ。個人的には今年も穴場と見ていた会社だ。
一応,Steamでは日本でも年に1作のペースでゲームが提供している。そして半年前の2024年12月,低価格アドベンチャーゲームとしてリリースされた「存在/しないあなた、と私」が,すこぶる評判になった。
![]() |
わずか定価235円で購入できる安価な同作は,ストアページにて“短編サイコホラービジュアルノベル”と銘打たれている。
あなたはある日,部屋にやってきた蠱惑的で謎めく少女「リリス」と出会い,100個以上の選択肢をとおして彼女と話し合うことになった。目的はただ1つ。少女の存在について,自分自身の答えを導き出し,個体の本質を探り,世界の真実を見つけること――。
解説の前に,リリスの自己紹介文も添えておこう。
キャラクター紹介なんてここにはないわよ。
ラベルで自分を定義するより、一緒に過ごして、様々な出来事や思い出でお互いのことを知りたいと思うの。
あなたはあなたという存在、わたしはわたしという存在。こうして、私たちはここで出会う……
もちろん、この話をどう解釈するのか、わたしのことをどう思っているのか……これも「自己紹介」の一種ではないかしら?
きっと,多くの人には意味不明だろう。ただ,この段階で興味が引かれた人はおそらく生粋のタイプのため,今からもう遊ぶといい。
本作は端的に,哲学と向き合うゲームだ。といっても,大学時代に哲学の講義を数週間でバックれた私には,哲学という言葉を正しく扱えない。なので“なんとなくそういう感じ”とだけ受け止めてほしい。
そしてこのゲームは,刺さる人たちに刺さりまくり,Steamにおけるレビューの94%となる約7500件が好評,最近の統計でも約1500件が好評となっており(8月2日時点。数日で500件増を確認),以下のような感想が連ねられている。
――まず初めに述べておきますが、万人受けするかと問われれば間違いなく「いいえ」です。しかし、刺さる人にはどこまでも刺さるゲームなのは間違いありません
――哲学的な内容のゲームです。デカルトとかそのあたりの哲学になります。イラストが好きならより楽しめるでしょう。
――リリス!リリス!リリス!リリスぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
と,このまま続けると既存作品の紹介にとどまるので本題へ。本作「存在/しないあなた、と私」の最新作が,CJ2025で発表された。
![]() |
![]() |
![]() |
タイトル名についてだが,主題のほうは「存在しない」以降の語が固有名詞になるのか,あるいはなにかしらの表現になるのかがローカライズ待ちのため言及しないが,サブタイトルは「銀玉ねぎの森」らしい。
なお,こちらの新作は試遊出展はなく,会場でアートデザインが公開されたのみだった。しかし,現地には本作のプロデューサーがやってきていたので,いろいろと話を聞かせてもらうことにした。
はじめに1作目の評価だが,本当に想定外だったらしい。というのも同作は同社におけるサブラインのインディーゲーム扱いだ。プロデューサー自身も「ただただ低コストで,ただただ自分の好きなゲームを作りたかった」と考えていたが,予想だにしない反響に驚いたとのこと。プレイヤーたちに対しては,「ただただ感謝です」と口にしていた。
実際,今の反響があるから次回作に乗り出せたのだろう。
![]() |
![]() |
そして本題の2作目は,1作目の立て付けを踏襲しないという。まず前作のように簡易的なテキストアドベンチャーに終始するのではなく,会話や探索要素などでのゲーム性をもっと高めていくとのこと。
また,前作ほどに哲学や概念を深掘りするのではなく,もうすこし柔らかめにして,キャラクターとの触れ合いを充実させるらしい。いわゆる普遍的なギャルゲーにはしないようだが,様変わりはするようだ。
これに関しては,疑問と納得がある。
まずエンタメ業界では往々にして,前作でウケた要素(とても幅広い話だが)を持ち込まずにチャレンジを上乗せするプロジェクトは,前作という比較対象もあって明暗がくっきり出やすい。率直に,変化を足すほど「求めてたのはこれじゃない」と言われる可能性が増える。
しかし,同じものを出しても飽きられる。ならどうしろっていうんだ,という呪いにも似た天啓を浴び続けるクリエイターたちは,新たな挑戦をしないではいられない生物。それを止める権利も(出資元でもなければ)大半の人にはない。それに,さらなる成功はこの道の先にしかない……ことが多い。不変性が求められる日常系でもなければ。
とどのつまり,ファンは成功を願って待とう。「これじゃない」ではなく「これがいい」のために,次回作は作られることになったのだ。より楽しく遊び続けられるゲームになっていれば,なによりだろう。
![]() |
![]() |
現地にはもう1本の新作「魔女のスナック」も出展されていた。なお,タイトル名はビジュアル内表記とテキスト内表記(こちらだと魔女酒場)で現状は異なっているため,フワッと覚えておく程度で。
本作は酒場経営や恋愛,育成やコスプレなどを楽しめるライフシミュレーションRPGだ。あなたは若き魔術師として,予期せず酒場の新オーナーになってしまい(あるある),街でステキな生活を送っていく。
前述した「存在/しないあなた、と私」シリーズは,従来の同社の色で考えると,言ってしまえば飛び道具的なタイトルである。Nino Gamesの本流は今もこちら。美少女経営SLGのほうにある。
本作は現状,別ラインで動いているリリース間近のタイトルが忙しく,まだまだ形にはできていないとのこと。
理想としては,小麦と果物の香りで満たされた魔法都市の一角,石畳の通りの角にひっそりとたたずむ酒場を経営しつつ,10人以上の魅力的な人物たちと交流し,ここでの生活を楽しんでもらうことだという。
現地の試遊では基本操作と着せ替え要素などが見られたが,キャラクタービジュアルのゲーム内実装はまだまだのようであった。リリース予定は2026年の第1四半期(1月〜3月)。約半年後となる。
![]() |
![]() |
正直なところ,私はNino Gamesの中国での存在感を肌感では理解していない。会社規模やゲームの大小で測るつもりはないし,超大手ではないこともなんとなく分かるが,どういうプレイヤー層が好んでいるのか。この半年は「存在/しないあなた、と私」の影響で,生態系にもさらなる変化が見えていることだろう。余計に分からぬ状態だ。
なので当面は,分かるまで見張らせてもらうのだろう。
![]() |
4Gamer「ChinaJoy 2025」記事一覧
「ChinaJoy 2025」公式サイト
- 関連タイトル:
存在/しないあなた、と私
- この記事のURL: