
インタビュー
[インタビュー]ダークなパックマン像を描く「Shadow Labyrinth」。それを生み出したのは「正しいパックマン」を守り続けた番人たちの“ナムコ愛”だった
明るく正しいレジェンドIP「パックマン」の重みの中,新たな作品を創り出す
4Gamer:
これまでにないパックマン像が描かれた「Shadow Labyrinth」ですが,社内からの反応はいかがでしたか。
高橋氏:
最初は,パックマンを昔から知る人から「なんでパックマンをこんな風にしたんだ」とか「俺が担当ならこの企画は許さない」と言われましたよ(笑)。
ただ,昔からパックマンを知る人にそういっていただけるのは嫌じゃないんですよ。むしろ「ありがとうございます」という気持ちです。
原田氏:
パックマンを大切に思っていただいているということですからね。
相澤氏:
私としては違和感は全然なかったんですけどね。
夛湖氏:
原田と高橋と私はナムコ最後の生き残りのようなものなんです。「パックマン」の岩谷さんや「スターブレード」を手掛けたバンダイナムコスタジオ初代社長の中谷 始さんといった,今はレジェンドと言われる方々が上司でした。
原田氏:
岩谷さんに怒られた最後の世代でしたね。
4Gamer:
岩谷さんとの思い出深いエピソードなどはありますか。
高橋氏:
岩谷さんと話をしているときに「お客が……」と言ってしまったことがあって,即座に「お客さまだろ!」と怒られましたよ。
もっと強い怒りを示されたのが「ディグダグ」の「プーカァ」を「プーカ」と発音したときですね。「プーカ『ァ』!」って大きく口を開けて(笑)。
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原田氏:
僕は初代PlayStationの時代に,「鉄拳」にパックマンを出そうとしてすごく怒られましたね。ポールやキングみたいなムキムキの身体に黄色い頭の「パックメン」っていうキャラクターを思いついて,「これは絶対にいける!」と思って提案したんです。そうしたら「会社のシンボルに何をするんだ!」とすごい剣幕で言われたんですよね(笑)。
4Gamer:
ほかのIPで活用する際のガイドライン的なものは,あったんでしょうか。
原田氏:
「鉄拳」で怒られたときにものすごく分厚い資料を見せられたのを覚えています。「こんなにややこしいなら,二度と触るか!」って思いましたね(笑)。
冗談はさておき,岩谷さんご自身はもうナムコを離れられていますが,「Shadow Labyrinth」を進めるとなったらそこは筋を通さなければいけません。
高橋は岩谷さんとともに「パックマン」シリーズの仕事をしてきて,その系譜を受け継いでいる唯一の人間であるとはいえ,「ダークなパックマン」なんて企画にどうやって話を通すんだろうと心配になりました。
高橋氏:
岩谷さんには,飲みに行ったときにちゃんと話をしてあります。
原田氏:
要するに,お酒の力でなし崩し的に企画を通したってこと?
高橋氏:
いえ,岩谷さんはそんな手が通用する人じゃないですよ。アルコールが入る前に説明しました。そのときはちゃんとしたお返事をいただけなかったんですが,2年ほど経ってから岩谷さんからいただいた年賀状に「お元気ですか。このようなパックマンの方向性へのチャレンジもいいですね」とだけ書かれていて……怒られているのか褒められているのか分からなくて震えました(笑)。
ただ,岩谷さんとは「パックマンチャンピオンシップエディション」などを一緒に作っていますから,マニュアル化されていないような考え方も肌で分かっているつもりです。もしかすると,こうした点を信頼してもらえたのかもしれません。
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4Gamer:
高橋さん自身が清く正しいパックマンを守る立場というお話がありましたが,そのご自身が「パックマン」にダークな要素を取り入れることに迷いはあったのでしょうか。
高橋氏:
私はそうしたことを最も長く考えている人間だと思います。20年以上パックマンのゲームを作っていますので。お客さまがどう思うかというのは今も心配しているところではありますし,緊張も解けてはいないですね。
相澤氏:
私としては,若者層の獲得という相談をした際,「『パックマン』をぶっ壊す」くらいのものでもいいのではないかとは思っていました。
今後「パックマン」のIPを展開するとしても,今までと同じことをしていたのでは新規層の開拓も望めないのではないか……という危惧があったので,「Shadow Labyrinth」の企画は,諸手を挙げて賛成しましたね。
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原田氏:
僕のムキムキな「パックメン」もそういう企画だったんだけどね(笑)。今や「鉄拳8」のDLCでパックマンのお面を被らせることもできるようになったのだから,時代も変わったなあと。
高橋氏:
最近では,バンダイナムコエンターテインメントが「パックマン」というIPをオープンで使っていこうという方針になっていましたから,そこもプラスに働きました。
ただ,ダークなパックマンというのは先ほど話が出たガイドラインでも想定されていない発想でしたね。
原田氏:
「パックマン」というゲームやキャラクターの立場も45年間でいろいろな変遷がありました。
かつては「最も成功した業務用ゲーム」としてギネス世界記録にも認定され,会社の象徴として知られていましたが,現在の学生から20代のパックマンって「アパレルのキャラクター」という認識なんですよね。
「自分たちの親や祖父母世代のキャラクター」「文房具やエコバッグに付いているキャラクター」「ハイブランドとコラボするオシャレ系」であるわけです。
今も知名度はありますし,象徴でもあります。ただ,本来メインだったゲームのIPとしては鳴りを潜めている。
これは今に限ったことではなく,「鉄拳」で僕が「パックメン」を出そうとしたとき既に「パックマン」は100万本も売れるものではなかった。良くも悪くも,皆さんに先入観がない状態が現在なんですよ。
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アーケードゲーム開発出身のベテランたちが作るやりごたえのある横スクロールアクション
4Gamer:
本作は,いい意味でファミコン時代的な手触りと難度設定だと感じました。こうしたアクションはどのようにして作られたのでしょうか。
高橋氏:
モーションの表現などは,現在の形になるまで非常に迷いました。
剣士のモーションを滑らかにつながるように動かすと「良くできたゲーム」に動画上では見えますが,見映えより操作性レスポンスを重視し,ボタンを押せば即座に反応するようにしました。
プロモーション動画映えはしなくなるんですが,プレイした人が気持ちよいと思っていただける事を大切にしています。これも「サムライスピリッツ」や「キングオブファイターズ」のアクションディレクターのノウハウと経験によるものです。
原田氏:
我々はアーケードゲーム出身ですからね。1コインを入れていただき,3分以内に心を掴むため,手触りから入るわけですよ。
今回の開発メンバーたちは,「パックマンチャンピオンシップエディション」でゲームデザインをした井口 正や,ネオジオの名作シリーズの初期作を手掛けた,1980,90年代のアーケード系アクションゲームの系譜を継いでいる者たちです。
Steamでも横スクロールアクションが増えていますが,それらの作品とはいろいろな意味で違う。今の若い方々には新鮮に見えるんじゃないかと思います。
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4Gamer:
現在のメトロイドヴァニアは,かなり細かな項目の設定が可能だったり,難度をかなり落とせるようになったりしています。「Shadow Labyrinth」の場合はこうした設定がないようですが。
高橋氏:
やり応えのあるゲームを作ろうという理由からです。ただ,今のお客さんにそうしたところだけを主張したとしても通りませんし,また反射神経の落ちてきた私自身がプレイしても楽しいものにはならないでしょう。
そこで,プレイヤーの成長要素を多めにし,時間をかければ難関を突破できる……というところを目標としました。
4Gamer:
難しすぎず,簡単すぎずという難度にするための工夫はどういったものがありますか。
高橋氏:
ミスをしても,直前まで戻すだけで済ませるほか,いろいろな工夫をしています。
難度を落とすことなく,徒労感をできるだけ少なくし,指に操作感覚が残っている直前のところまで戻す。そうでなくても少し休んでリフレッシュすれば,次のプレイでは抜けられるようになっている。そういう難しいけど,繰り返し遊んだ結果が出やすい作りとしています。
4Gamer:
そうした作り方は,アーケードゲーム的な考え方がベースになっているような気がします。そこに細やかな心遣いも取り入れていると。
高橋氏:
アーケードゲームを開発しているときも,ゲームセンターでのロケテストではお客さまの顔しか見ていませんでした。
それくらいお客さまの反応が気になりますし,舌打ちしてプレイを止めてしまおうものなら,それは開発者としての屈辱だったんです。
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夛湖氏:
プレイを終えられたお客さまの後を尾けていましたからね(笑)。プレイを終えた後に何を言っておられるか。どこに行かれるのか。両替機に行ったのであれば,我々がロケテストしているゲームをまた遊んでいただけるのか。別のゲームを遊ぶのであれば,それはどこの何という製品かも徹底的に調べていました。
4Gamer:
ロケテストといえば,ゲーム機の横にメーカーの人がいて,クリップボードにプレイ時間や到達ステージ数などの定量的なデータを書き込んでいく光景が印象的ですが,本当に重要なのは,そうしたデータではないということでしょうか。
原田氏:
逆ですね。定量的なデータよりも,お客さんの反応が大事でした。サラリーマンが仕事を終えてゲームセンターに繰り出す,午後5時以降が本番でしたね。初日の反応が良ければ,もう後は大丈夫というところはありました。
Zoomで顔を突き合わせつつ「良い喧嘩」をする,妥協なき物づくり
4Gamer:
開発中のエピソードで思い出深いものはありますか。
高橋氏:
業務時間中は40数人のメンバーが常にZoomをつなぐようにしていましたが,これは珍しい体制でしたね。
テストプレイをするにしても,面白ければ自然と表情に出るし,良いことがあればすぐに褒められる。侃侃諤諤(かんかんがくがく)のやり取りをしていました。成果物に問題点があった場合,即座に浮き彫りにできました。
コロナ禍もあってZoomに頼らざるを得なくなったという側面もありますが,プラスになったと思います。
4Gamer:
人数が少ない中,お互いが密に関わりつつ開発を進めていくというあたり,いい意味で昔のゲーム開発のような雰囲気が感じられます。
高橋氏:
本作でディレクターを務めている福井智章さんは「NAM-1975」や初代「サムライスピリッツ」「星のカービィ 鏡の大迷宮」などを手掛けていますが,この世代の開発者というか福井さんは哲学を強く持っています。少しでも面白くないと思ったら,スケジュールに間に合わせることよりもゲームを面白くすることを優先するんです。
開発メンバーも福井さんと30年以上タッグを組んでいるので,やり方や哲学を熟知していて,例えばプログラマーも急な変更に合わせられるよう準備しておいてくれるんです。良い意味で硬派な人たちなので,良い喧嘩をしたり見たりしながら物づくりができました。
4Gamer:
そうした「良い喧嘩」の中で印象に残っているものはありますか。
夛湖氏:
高橋から「初代『パックマン』のようなメイズをメインフィールド上に出したい」といわれた際は,ゲームプレイと設定の兼ね合いでかなり揉めることになりました。
私は「リアルなフィールドにパックマンメイズゲームが突如として出ると違和感が大きいので止めてもらえないか」という話をしたんですが,高橋は「どうしてもメイズを出したい」というんです。
メイズは「パックマン」の根幹になる部分だから,パックマンメイズをどこかに出したいというのは理解出来ます。最終的には設定をいろいろと作り,軽めに遊べるミニパックモードと、概念世界であるガチのMAZEとで世界を分けて不自然にならないようにしました。
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4Gamer:
ゲームと設定とストーリーテリングを密にかみ合わせることを目指したと。
高橋氏:
同じように福井さんから「セーブポイントでのセーブに制限を加えよう」という話が出た際も印象深いですね。これは難度を調整するための措置だったんですが,なぜか設定の夛湖が頭を抱えるんです。
4Gamer:
それも,ゲームと設定が密に関わっているからでしょうか。
高橋氏:
そうです。セーブデータそのものの世界設定を構成しているので,齟齬が出るというんです。
夛湖氏:
設定がゲームの足を引っ張ってマイナスになるのは問題外ですが,何も考えないのもダメだと私は思っています。
設定は世界のまとまりとしてにじみ出ます。これをお客様が消化できるようにして,ゲーム体験をプラス方向に引き上げるものにしないといけない。この部分で「Shadow Labyrinth」は緻密に組み過ぎて,設定を1つ変えると,ほかの部分も連鎖的に変えなければならなくなったんです。
4Gamer:
そうなると,開発中もいろいろと大変だったのでは。
高橋氏:
私としては,福井さんと夛湖がやり合っているのを見るのが楽しかったですね。彼らは悩んでいるんですが,その作業の過程がすごく楽しそうだったんです。いい人たちと一緒に仕事ができて本当にうれしかったですね。
4Gamer:
先ほどから夛湖さんは「設定はゲームのためのものである」というお話をされています。せっかく作り込んだ設定だから,何とかして見せたい,見てもらいたいといった感情はないのでしょうか。
夛湖氏:
そうした感情はないですね。我々が作っているのは「ゲーム」であり,手触りから感じ取るものです。加えて我々はアーケードゲーム出身であり,「この飛行機に乗って,敵を倒しに行け」程度のストーリー性の中でゲームを作ってきた人間ですから。
とはいえ,今の家庭用ゲームでは「ゲームとしてはよくできているかもしれないけど,深みがない」となります。Moreの部分が求められるのです。「Shadow Labyrinth」では,Moreの部分としてのストーリー面を充実させました。
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4Gamer:
ゲームを遊んでもらったプレイヤーの「もっとほしい」の部分に答えるために設定を練っていると。
夛湖氏:
そして,さらに先を求めてくるお客さまのニーズに応えるものとして,裏の設定などを潜ませておくんです。
開発者の人情としては,こうして潜ませたものの話題を第一に挙げたくなりますが,それではお客さまがお宝を探す楽しさがないし,ゲームを見ることなくお宝だけに注目してしまいます。我々としては,ゲームの中でお宝を探す過程も大いに楽しんでいただきたいんです。
4Gamer:
では,ご自身が作られた設定が見つけてもらえないことについても特に抵抗はないということなのでしょうか。
夛湖氏:
特に抵抗はないですね。過去20本ほどゲームを作り続けてきましたが,見つかるまでに13年かかったネタもありますし。
「Shadow Labyrinth」にもいろいろなネタを仕込んでいますが,30年後のナムコ100周年辺りで見つかることになっても何の問題もないです。それ以上にゲームとストーリーを楽しんでいただきたいですね。
4Gamer:
「Shadow Labyrinth」のストーリーで描きたいことやテーマのようなものはあるのでしょうか。
高橋氏:
「Shadow Labyrinth」のテーマは「自信を持って生きる力」です。あまり詳しくお話しするとネタバレになってしまうんですが,「自信のない自分も,ゲームをクリアすることで少し胸を張って歩けるような人になった」というものですね。
「社会の枠組みの中で認められたい」と頑張っていくなか,自分が本当に求めるものを見つけて「自分のために頑張ろう」と切り替わっていく過程を描きたかったんです。
4Gamer:
確かに,ゲームをクリアすると自分に自信が持てるようになったり,自己肯定感があがるという感覚はありますよね。難関を突破できたときにガッツポーズが出ることもありますし。
高橋氏:
はい。難度を歯ごたえのあるものにしていることとつながりますが,クリアしたときの胸を張って歩けるような感覚と,ストーリーとリンクさせたのが「Shadow Labyrinth」なんです。
原田氏:
自分の好きなことで得意になれるって,すごく大事なことだと思うんですよね。ゲームセンターがオンラインでつながっていなかった昔は,お店ごとにハイスコアを取った「お山の大将」がいました。
たとえ小学生でも「俺はこのゲームセンターで一番強い」と「お山の大将」になれたからこそ自分を認めて頑張れた。もちろん,生きていくうちには挫折を味わうこともありますが,一時でも「お山の大将」になれたことは1つの財産だと思うんです。
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4Gamer:
ちょっとした成功体験が自己肯定感につながったりすることはありますよね。
原田氏:
今はオンライン対戦で,自分の実力がどの程度のものであるかがすぐに分かりますが,これってあまりよくないことなんじゃないかと思うんですよ。
本当は過去の成功体験を原動力に大人になっていろんなことに挑戦するはずなんですけれど,早い段階で身の程を知らされるから,良い意味で「調子に乗った」人が出てこない。
だから,「Shadow Labyrinth」のような一人プレイ用のゲームは,「お山の大将」になれる稀少な機会であると思うんです。ぜひ遊んでみてクリアした自分を褒めてほしいと思いますね。
ナムコIPは伝説に留まらず,常に新たな展開の機会を狙う現役である
4Gamer:
そういえば,原田さんが「Shadow Labyrinth」のプロジェクトに合流されたのはどのタイミングだったのでしょう。
高橋氏:
初期のタイミングですね。横スクロールアクションゲームの企画ができあがった際,クラシックゲームが大好きな人の客観的な意見が欲しくて,原田のところに行ったのがきっかけです。
最初こそ「Shadow Labyrinth」の話をしていたんですが,どんどんクラシックゲームの話になって,盛り上がった覚えがあります(笑)。
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原田氏:
高橋たちがある程度コンセプトが固まった段階で来てくれたので,僕は制作体制の構築やプロモーションの話などのアドバイスをする立場になりました。
4Gamer:
ゲームの内容というよりは,ビジネス的な側面のアドバイスということですね。
原田氏:
そうですね。「パックマン」の関連タイトルとして世界で戦っていくため,「鉄拳」をグローバルIPに育てていった僕の経験や感覚を使って,自分たちの考えが正しいかどうかを見ていたんだと思いますね。
ただ,本来の僕の立場だと「Shadow Labyrinth」が売れても評価されることはないんですよね(笑)。そうした会社的な組織を越えて見てほしいということだったので,かなり変わった関わり方だと思います。
4Gamer:
そうした観点からどのようなアドバイスをしたのでしょうか。
原田氏:
あなたたちが揃っていれば,いいものができるのは分かっている。ただ“昨今のゲーム界は,いいものができた=売れるというものではない”という話をしました。
ゲームを売るというのは,クリエイターからあらゆるものが泉のように生み出されて世界へ広がっていくようなものだと思われています。
ただ,そんな時代はもう終わっていて,昨今「いいゲームなのに売れない」という作品はたくさんあります。届け方や露出のさせ方で売り上げが大きく変わってしまうんですよ。
4Gamer:
興味のある人にしっかり届けるにはどうすればいいのでしょうか。
原田氏:
このゲームを売りたいと思っている人,自分が扱えば絶対に売れると思っている人がいるなら,彼らに裁量権を与えてその意見をクリエイターに伝えるほうがいいですね。
今回は「パックマン」が大きな人気を得ているアメリカのマーケティングスタッフの意見を取り入れています。彼らはお客さまとつながっているので,彼らがどれだけやる気になるかがカギとなります。
正式タイトルが「Shadow Labyrinth」になったのも,渋めのロゴも,「パックマン」に大きな熱量を持つエリアの人たちの意見によるものなんです。
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4Gamer:
広く売るには熱量を持つ人たちの意見を取り入れた方がいいと。
原田氏:
クリエイターたちは,すぐにロゴやパッケージのレイアウトを自分たちで決めたがるんですが,それでは自己満足のものができてしまうことが多いんですよね。
高橋氏:
「Shadow Labyrinth」というタイトルを決めるときも,揉めました。「でも,僕の方が『パックマン』のことを知ってるんだ!」みたいな(笑)。
原田氏:
「開発者としてやりたいことは分かるけれど,世界で戦ったことのないヤツはすぐこうなるんだよ!」ってね(笑)。
僕自身もクリエイターであった状態から大人の事情を知ってしまったタイプなので,ものごとの決め方をマーケティングドリブンなところから戻したくなるところはあるんですけれど。
4Gamer:
海外のマーケティングスタッフの熱量はどのような感じだったのでしょう。
相澤氏:
非常に熱いですよ。特にアメリカのスタッフはものすごく熱量が高いです。設定をしっかり把握しようとして,いろいろなことを熱心に尋ねてくれるんですよ。
原田氏:
日常生活のいろいろなところに「パックマン」が浸透しているというのも大きいですね。アメリカの人って家を建てると地下室を作り,お父さんの趣味の品を揃えるんですが,その際の定番は20数万円する「パックマン」の筐体なんだそうです。
こうした「パックマン」を自分の仕事で扱えるんだから,モチベーションも高まるということでしょうね。
4Gamer:
「パックマン」はアメリカでも爆発的な人気を獲得して,文化的アイコンになった……というのは知識として知っていますが,本当に深く愛され続けているんですね。
原田氏:
「パックマン」に対する思い入れももちろんですが,「自分が『パックマン』を売った」という実績はキャリアアップにつながるので気合が入っていますね。合理的だし,いいことだと思います。
もちろん,日本と同様にオリジナルに対するこだわりを持つ方はおられますが,それ以上にイノベーションを評価する方が多いんだと思いますね。
4Gamer:
今回は「パックマン」の遺伝子を持つ「Shadow Labyrinth」がリリースされましたが,ほかのナムコIPについての展望を聞かせてください。
相澤氏:
具体的なところはお話できない部分もありますが,ワールドワイドでゲームやアパレル,ライセンス展開も含めた可能性を常に検討していくというスタンスになります。
求められるタイミングがあり,面白いものになりそうな企画があれば,ゲームやそれ以外のいろいろなものに展開していきたいとは思っています。
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高橋氏:
当時はマシンスペックが低いのでゲームルールに特化せざるを得ない,その中でも特にナムコ作品は最高に面白いんですよ。
「ディグダグ」なんかは土の中を掘り進んでいって敵にモリを突き刺して空気で膨らませる……なんて,普通では出てこない発想です。開発からするとゲームシステムが魅力的なので,機会があればチャレンジしていきたいですね。
原田氏:
「ディグダグ」の敵の倒し方は,エグいよね。それこそグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一さんにお願いすれば,個人的にはすごく面白そうなゲームになりそうだなと思ったり(笑)。
4Gamer:
確かにそれは見てみたいですね(笑)。海外でナムコIPはどのように展開しているのでしょうか。現行機のスティックは2本ありますし,「リブルラブル」なんかも面白そうな。
相澤氏
私が「PAC-MAN 99」を手掛けていたときも,「源平討魔伝」や「超絶倫人ベラボーマン」など,いろいろなレジェンドIPのスキンを作ることができてありがたかったですね。
原田氏:
「源平討魔伝」はやりたいけれど,やるとしたらお祓いに行かないといけない(笑)。
相澤氏:
「パックマン」の可能性はまだまだあると思うので,いろいろな方向性で突き詰めていきたいです。「パックマン」というIP自体も45周年から50,60周年と続いていくので,次に続けていけるような取り組みを進めて行きたいです。
4Gamer:
期待しています。ではそろそろお時間も迫ってきたので,最後に,読者に向けてのメッセージをお願いできますか。
原田氏:
先ほども言いましたが,一人用のゲームとして今は貴重になった「お山の大将」感を味わえるのが「Shadow Labyrinth」です。成功体験で自分を認めることができ,良い意味で調子に乗ってみてください。
相澤氏:
「Shadow Labyrinth」は新しい取り組みを盛り込み,いろいろな方に遊んでいただきたい「パックマン」です。
今までチャレンジしたことのないダークな「パックマン」であり,「MAKE IMPACT!」という45周年のテーマにふさわしい,楽しくてよいゲームになっているので,ぜひ皆さん楽しんでください。
高橋氏:
「Shadow Labyrinth」についてはネット上の反応をずっと見ていますので,Xでのポストでもなんでも,皆さんからのお声をいただければと思います。
その声をもとに,この「Shadow Labyrinth」をより良いものにして,さらに今回のノウハウを生かした次の作品を作っていきたいと考えています。
また,CMとなりますが,「Shadow Labyrinth」のデジタルデラックスエディションには60ページ以上あるデジタルアートブックが付属します。現在の形になるまでのアイディアイラストが半分以上の内容で,U.G.S.F.年表もあります。
そこから我々のクリエイトを感じ取っていただければ幸いです。「Shadow Labyrinth」の音楽担当で「スプラッターハウス」の音楽もつくった田島勝朗さんのBGMを聴きながら見られますので,ぜひ楽しんでください。
夛湖氏:
今回の作品は「パックマン」45周年と同時にナムコ70周年を記念するという側面もあります。私は入社から31年経ってもナムコのことが大好きで,そうした気持ちを込めました。いろんなナムコネタが入ってはいますが,すべてのネタを理解する必要はまったくありません。
ただ「パックマン」を軸に,ナムコは相変わらず突拍子もないものを作ろうとしていることを体験していただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「Shadow Labyrinth」公式サイト
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- アクション
- CERO B:12歳以上対象
- バンダイナムコエンターテインメント
- プレイ人数:1人
- Nintendo Switch 2:Shadow Labyrinth
- Nintendo Switch 2
- Nintendo Switch:Shadow Labyrinth
- Nintendo Switch
- Xbox Series X|S:Shadow Labyrinth
- Xbox Series X|S
- PC:Shadow Labyrinth
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- インタビュー
- ライター:箭本進一
- 編集部:だび
- カメラマン:林 佑樹

Shadow LabyrinthTM & (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
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