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「学園アイドルマスター」のコミュができるまで。制約の中でも,演出と工夫でアイドルたちをより輝かせるために[CEDEC 2025]
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印刷2025/08/04 10:10

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「学園アイドルマスター」のコミュができるまで。制約の中でも,演出と工夫でアイドルたちをより輝かせるために[CEDEC 2025]

 「学園アイドルマスター」iOS / Android / PC)の「コミュ」(会話/イベントシーン)は1か月に100話以上が作られ,アイドルたちの魅力を引き出し続けている。実は,さまざまな制約が課されており,開発スタッフは日々工夫しながらより品質の高いコミュを作ろうとしているのをご存じだろうか。
 開発者向けカンファレンス「CEDEC 2025」では,「『学園アイドルマスター』のコミュができるまで 〜制約の中で光る演出術と制作システムの工夫〜」と題した講演が行われた。

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登壇者。(左から)宇野雅視氏(QualiArts スクリプター),杉村貴之氏(同 3Dモデル・3D演出ディレクター),山城悠太郎氏(同 テクニカルアーティスト室  Unityエンジニア)
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 「学園アイドルマスター」のコミュは,大別して縦画面の「縦画面コミュ」と横画面の「初星コミュ」が存在し,別々のチームによって作られている。
 縦画面コミュはアイドル個人にフォーカスしており,短い期間でたくさん制作しなければならない。一方,初星コミュは花海咲季,月村手毬,藤田ことねのユニットが成長する様を描き,縦画面コミュより長い期間をかけて作る。画面の使い方から目的,制作期間まで対照的だ。

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 縦画面コミュは2025年7月現在,2000話以上存在している。これはサービス開始直後の800話から積み重ねてきたものだ。本作のサービスは2024年5月にスタートしており,1か月あたり100話以上を作っている計算になる。
 だからといって,質の低い物語は許容されない。量産とクオリティ,相反する要素を両立し続けている。

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 そのためには,さまざまな効率化が行われている。カメラは引きと寄り,アイドルの立ち位置は固定,3D空間の中でコミュの背景として使う位置も固定といったフォーマットが決められている。
 とはいえ,こうしたルールに固執してアイドルの魅力が表現しきれないのでは本末転倒だ。姫崎莉波のコミュではカメラ位置を変え,十王星南の場合は“アイドルの力を見抜ける”という設定に合わせたエフェクトや目元を際立たせる専用モーションといった演出を加え,アイドルの魅力,個性,人となりがより明確に描かれている。

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 そして初星コミュは,本作が新規性を持つタイトルであることから,初めてゲームに触れる人に対して魅力を紹介するべく,「アニメのような感覚で見られるストーリー体験」「シナリオの魅力を可能な限り映像化」というコンセプトである。3Dの専門知識なしで制作できる環境が作られ,現時点で66話,約5時間分が実装されている。

 縦画面コミュと同様,初星コミュにも制約が存在する。「画面内に出せる人数は3人まで」「プロデューサー(プレイヤー)はその場に存在するものの姿を出すことはできない」「アイドルたちの動きは汎用モーションの組み合わせのみ」「カメラは始点と終点の2点間を直線的に動かすのみ」といったものだ。こちらも制約が大きい。

 プレイヤーからすると,とくに「アイドルたちの動きは汎用モーションの組み合わせのみ」という制限がにわかに信じがたいのだが,これこそ開発チームの工夫と腕前である。汎用モーションの目線や首の動きを変え,身体の一部に別の汎用モーションを上書きすることをはじめ,さまざまな工夫により,制限を感じさせない。

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 初星コミュは制作フローが大きく変化している。当初はシナリオのFIX後,2〜3週間かけて絵コンテを作り,その後さらに1〜2週間で3DCGツール「Maya」によるVコン(ビデオコンテ)ができ,その後にQualiArtsで使われるツール「Uguiss」でVコンを眼コピするという体制だった。
 しかし,せっかく作ったVコンもカメラくらいしか流用できないため,無駄が多いということで,制作フローの見直しが行われた。Uguissで直接Vコンを作り,ボイス収録後にもUguissで最終調整を行うという体制となり,より短期間でコミュを作れるようになった。

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 演出では「伝わる演出」「テンポの良さ」を重視している。シナリオはほぼセリフのみで構成されているため,狙いや強調すべきポイントを開発スタッフが汲み取って再構成を行い,カメラやカットワークでより分かりやすいものにしている。

 例えば,咲季とことねのダンス対決では,どちらも同じ汎用モーションを使うしかない状態から,ことねのほうが上回っていることを表現しなければならない。ここでは,ダンスの躍動感を強調するカメラワークが工夫された。
 なお,公式動画の8話ラストでは咲季,9話冒頭でことねのダンスを見られるが,とても同じモーションとは思えない。演出の力と大切さがよく分かるはずだ。

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 一度作ったシーンを改善する取り組みも行われている。
 手毬と咲季の口論では,当初はベーシックな演出でシーンが作られたものの,咲季のセリフを食い気味に再生するという改善により,「演技臭さ」「段取り臭さ」を消している。ボイス自体は変わっていないのだが,再生のタイミングをわずかに変えるだけで,コメディとしての面白さが増す。

 手毬が咲季にボイストレーニングをするシーンは,「自分(手毬)は歌っているときどうしていたか」と内省することで,アドバイスの効果が上がるという内容だ。開発スタッフはシナリオから「内省こそがシーンの肝であり,大切な部分である」と読み取り,手毬が過去の自分を振り返るイメージカットを挿入することで,より意図が伝わりやすくなっている。

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 秦谷美鈴と星南,佑芽が話し合うシーンは,団結できたと思ったら,即座に意見が分かれて前途多難……。ここでは3人の立ち位置を三角形にし,さらに相手への目くばせが追加された。目くばせで一体感を強調したことから,意見が分かれた際のコメディ感がより強調されている。

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 そして,咲季と佑芽の姉妹が対決し,決着がついたあとのシーンでも,ボイスはそのままにカメラワークなどの力でドラマチックなものになっている。ここで注目すべきは「姉に初めて勝った佑芽が咲季の決めポーズを真似て喜びを表現」「負けに打ちひしがれる咲季の泣き顔がプレイヤーには見えないカメラアングルになっている」の2点である。

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 どちらも最初からこうなっていたとしか思えないシーンなのだが,以前の決めポーズは普通に腕を上げるだけ。咲季の泣き顔も見えていた。
 佑芽が咲季の決めポーズを真似することにより,今回の勝利と過去からの関係性が際立つ。そして,咲季の泣き顔を見せないことでプレイヤーに想像の余地を与え,彼女の絶望感を際立たせている。同じボイスと3DCGでも,シナリオの解釈と演出によってドラマ性が増していることが分かる好例だ。

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栄養と機能性に全振りして,ひたすらに無機質であると皆が根を上げた「咲季のメニュー」。当初はセリフのみだったが,しっかりと絵で見せて演出効果を高めている。あまりにも……な見た目と「美味しいのに二度と食いたくない」といったセリフが相乗効果を発揮し,大きな話題となった。「咲季の特製弁当」として商品化されている
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お馴染みの15秒スポットも,初星コミュと同じツールを使い,汎用モーションのみで作られている。自主撮影のビデオを思わせる臨場感と,生き生きとした姿は汎用モーションとは思えない。狙いを明確化して素材を組み合わせる演出の力だ
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クライマックスのカットシーン。専用のモーションを使い,制約から解き放たれている
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縦画面コミュはタップすることで進行するインタラクティブ型,初星コミュは自動進行。別々のシステムを使い分けるとスクリプターの負担が大きく,運用も大変になるため,性質が正反対のコミュを共通システムで再生できる方式を採用している
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本作のシステムはタイムライン方式がベースになっている。タップを待っているときの概念図
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初星コミュには選択肢がある。決められた時間どおりにイベントを再生するタイムライン方式と選択肢による分岐は相反するが,「すべての選択肢が一列にタイムラインに並んでおり,選ばれなかった選択肢を実行(再生)しない」方式で両立させた
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初星コミュは動画のようにシーク可能。選択肢が確定する前であれば戻れるが,選択後はシークしても選択肢が出てこない。そのままでは選ばなかった選択肢の分だけ時間が発生するが,シーク位置が選択肢の位置に戻ったときのみ,つじつまを合わせる
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シナリオはスプレッドシートで管理されており,作業のベースとなるスクリプトを自動生成できる。また,レギュレーション違反を自動で検知し,警告を出してくれる
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 品質と量を両立したコンテンツを提供するには効率化が必要であり,それには制約を伴うこともある。しかし,「制約がある=質が低下する」ということではなく,工夫次第でより良いものを作れるということが分かった。
 そして,アイドルたちのドラマを演出するうえでは,彼女たちの個性とシーンの意図を正しく把握し,魅力を最大限にするための解釈が必要だ。マニュアルどおりに素材を配置する作業ではなく,キャラクターの人となりについて解釈違いを起こさないようにしながら,拡大していく創作であると感じた。佑芽が咲季の決めポーズを真似るシーンなどは,制限の中で創作した好例といえるだろう。
 これらを意識してコミュを鑑賞すると,新しいものが見えてくるのではないだろうか。

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