企画記事
ルームシェア中の女性オタク3人が乙女ゲームをガチ議論。「闇堕ルート」が重厚なオトメイト新作「OVER REQUIEMZ」の感想を語り合ってみた
2025年4月17日発売のNintendo Switch向け恋愛アドベンチャーゲーム「OVER REQUIEMZ(オーバーレクイエムズ)」。人気乙女ゲームブランド「オトメイト」の新作で,ジャンルは公式には「真相か闇堕か選択を迫る恋愛ADV」とされています。※本記事は,独自企画に基づいた内容です。2025年7月15日17:15,一部,内容を調整いたしました。
今作では,プレイヤーは,国王と4人の魔女が治める国「オズ」に迷い込んだ女の子として物語を進めていきます。物語の冒頭,主人公は異世界で死罪を宣告されてしまうのですが,興味を引くのは攻略対象キャラクターが「同じく死刑囚となった『殺人鬼』たち」だという個性的な設定です。主人公たちは,この国にたびたび発生するという廃墟の異変に立ち向かうため,危険な廃墟探索へと赴くことになります。
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廃墟探索のパーティは主人公を含め6人。実父である国王を殺害した疑いが持たれている王子・カイゼ,故郷の村人を惨殺したという研究者・クロード,旅商人を襲ったといわれている葬儀屋・モリィ,自らが率いた小隊の隊員を虐殺したという騎士・ノイル,そして廃墟探索にあたる罪人たちの監視役・ドロシーです。ほとんどが,自ら他人の命を手にかけたという過去を持つキャラクターたち。そんな彼らと時間を過ごす中で分かる彼らの本当の姿,そして「真実」とは……?
物語を進めるごとに,キャラクターたち,そして物語の印象がどんどん変化していくのがこのゲームの特徴。そんな「OVER REQUIEMZ」を,ルームシェア中の女性オタク3人が一緒にプレイしてみました。
■登場人物
塗岡(ぬれおか・N):会社員。ミュージシャンが好きで,学生時代には攻略対象10名全員ベーシストの乙女ゲーを作りたいと妄想していた。好きな属性は爽やかで優しいお兄さんタイプか,耽美なタイプの両極端。
塩豆(S):会社員。近年,世の中に黒髪短髪のキャラが少なくなっていることを嘆いている。4番サードでホームランをたくさん打ちそうな人が好み。
きんつば(K):この記事をまとめている会社員兼ライター。最近楽しみにしているのは女性アイドルグループの現場に行くこと。眼鏡をかけている人に惹かれがち。
恋愛ゲームとしてはかなり濃いめの味付け
K:いや,思ったよりめちゃくちゃ重かったし癖強かったですよね……?
S:私たちが直近でプレイした「My9Swallows TOPSTARS LEAGUE」とはテンションが全然違ったよね。あれは真っ直ぐなお仕事ものの乙女ゲーだったから。
N:我々アラサーのオタクとしては,ときめきを求める乙女ゲーとしては味付けがかなり濃かった。過激な恋愛物語ってこういう感じ,っていうのはあるかもしれないよね。恋愛ADVとしても,ノベルゲーとしても読み応えがある物語だったと思ったな。
K:ゲームシステムとして好感度がないから,選択肢によって変化するキャラクターとの会話を楽しめたよね。今作の特徴は,「真相ルート」「闇堕ルート」の分岐とストーリーがかなりしっかりと分かれていること。共通ルートの先の分岐によって,本当に結末がまったく異なるのが面白いです。
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N:主人公がまったく知らない異世界に迷い込んで……というところからそうだけど,物語の作りとして全体に「謎」が散りばめられているのがいいよね。
S:そもそも,登場人物がほぼ「殺人鬼」の恋愛ゲームって攻めている感じがあるけど,「闇堕ルート」はそれを通り越してどんどん「刺さる人には深く刺さる」道を進んでいった印象。
K:非日常を思いっきり楽しめる。それがゲームのいいところだね。
N:今作の闇堕ルートは,束縛要素がかなり強いストーリーがいっぱい出てくるよね。とにかく,味付けが濃い。
S:かなり濃い。こってり。
異世界の「分からなさ」を巧みに描いたシナリオ
K:「何らかの死を乗り越えて,それを超えて結ぶ絆」がゲームに通底しているテーマだけど,人が死んだり,グロいとはいわないまでも血が出る描写があったりする。怖い描写が含まれているので,苦手な方は様子を見ながら楽しむのをおすすめしたいですね。
N:そうだね,しっかり怖いシーンもあった。
K:薄々お気づきかもしれませんが,我々がすごくぼんやり話しているのは,この作品はネタバレなしでやってほしいからです! 謎を解き明かす要素が強いので!
S:異世界に迷い込んだ自分が分からないこと,出会ったばかりの攻略対象キャラクターの分からない素顔,そして攻略対象キャラクターも分からないこの世界の謎,など,それぞれ違う「分からなさ」がうまく絡んでいるのがこのゲームのいいところなので!
K:異世界に迷い込んでしまった主人公の「分からなさ」を通した没入感が巧みなので! シナリオの力を感じます!
丁寧な物語,でも乙女ゲーとしては甘さ控えめ?
N:日常生活に疲れたOLこと我々が終業後に「癒やされたい♪」とプレイするには重めではある。「闇堕ルート」は特に,攻略対象キャラクターが病んでいく過程を見ていくことになるので。
S:そもそもの根底を覆すことを言ってしまうけど,多くの乙女ゲーって,何かしらの暗い過去を背負った男性たちを,主人公となった我々がカウンセリングしていくことになるじゃないですか。
普段あまり乙女ゲーをプレイしない私は「生まれつきファビュラスな私に惚れろよ! お前が!」というメンタルなので,あまり合っていなかったかもしれない。途中で「むしろ俺をよしよししろ!(大暴れ)」となった。乙女ゲー好きなら問題なく楽しめると思う。
K:謎が多い世界で攻略対象キャラクターと信頼関係を築いていく部分はかなり丁寧に描かれていて,それが読み応えにつながっているのだけど,Yちゃんにとってはそう感じたのかな。いわゆる,キュンとするような甘いときめき要素もちゃんとあるよね。
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N:シンプルなプロローグから個別ルート分岐後がたっぷりと長い分,キャラクターの掘り下げはかなりしっかりしているシナリオだよね。そして「謎を追う」というストーリーにおいてはテンポの良さってかなり大切だけど,そこもよかったと思う。
美しいグラフィックスと読み応えある物語に没入するには
S:ファンタジーものとあって,グラフィックスはめちゃくちゃ気合が入っているし,ゲーム全体のデザインも美しいよね。
K:それは本当に今作のおすすめポイント! ダークファンタジー好きな人は絶対に刺さります。「真相ルート」は,過去を2人で乗り越えるなど,人生レベルの困難に立ち向かう場面や,一緒に挑むシーンが多く,強い絆で結ばれる物語が好きな人におすすめかな。「闇堕ルート」は,束縛,耽美,共依存……といったダークな恋愛要素が満載なので,そうした雰囲気が好きな人にいいと思う。
N:攻略対象キャラクターも見た目はファンタジーだけど,みんな社会性があるのがいい。乙女ゲーって1人くらいは異常にツンツンしていたり,俺様すぎて価値観が人と離れ過ぎていたり,「本当にこの人と打ち解けられるのか……?」というキャラクターがいるけど,今作は王子であるカイゼでもちゃんと対話ができるから。
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K:そうだね,人それぞれいろいろな好みがあると思うけど,今作はキャラクターの掘り下げがプロローグを経たキャラクター選択後に初めてしっかり行われる構成になっているから,記号的な「この人好き!」「すごく刺さる!」を感じなかったキャラクターを選んでも楽しめると思う。どのキャラクターとも物語を楽しめそうな感じがするのがいいよね。
S:あとはやはり,「闇堕ちが大好き!」という人にはマストでやってほしいですね。「真相ルート」「闇堕ルート」が各キャラ2つずつの計4つのエンディング。真相ルートでしっかり心にくる物語を描いているのはもちろんだけど,闇堕ち好きにも手厚い。私が良かったと思うのはカイゼの闇堕ルートの1つなんだけど,物語としての仕掛けがとても面白かった。
K:私は二次元に関してはハッピーエンドであってくれ! という気持ちが強いタイプなので,クロードの真相ルートの1つが好きだったな。とはいえ,今作は真相もどっちに行くかでかなり読後感が変わるよね。実際,クロードのもう片方の真相ルートでは結構ショックを受けました……。
N:クロード,優しいし好きなんだけど,最初に真相ルートをやってしまったので,私はあとから闇堕ルートが受け入れられなくて……(笑)。私がいいなと思ったのはノイルの真相ルートかな。バディ感が強くて好きだった! あと,サブキャラクターが魅力的なのも良かった。
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N:女の子キャラも攻略したかったな〜。
K:我々はどちらかといえば,ダークで耽美な世界を愛しつつも,年齢とともに健康的で爽やかなキャラクターが好ましいと思うようになったタイプですが,シナリオにかなり読み応えがあり,推理が必要なわけではないながらミステリー的要素が多分に含まれているので,最後まで楽しめました。お気に入りのキャラクターじゃなくてもこっちのルートもやってみたい! と思わせる作品だった。
S:私たちはルームシェアをしているので一緒に進めたけど,作品世界にどっぷりと浸るためには,やっぱり1人で楽しむのが一番かもしれない(笑)。
K:タイトル通り,死を受け入れたり,弔ったりした先にあるものは……という作品ですからね。そこにしっかり向き合ったほうが,体験として絶対にいい。
N:ぜひ部屋を少し薄暗くして,それでいて目を悪くしないように気をつけながら(笑),夜中にやってほしい1本ですね。
「OVER REQUIEMZ」公式サイト
(C)IDEA FACTORY/KOGADO STUDIO